下痢や便秘が半年以上続いている。
朝から吐き気がする。

 

このような症状で受診された21歳女性。
CTを撮影すると骨盤内に腫瘍がありました。

 

若い女性に多くみられる良性腫瘍です。

 

妊娠は大丈夫なの?
手術で卵巣をとらないといけないの?
悪性に変化しないの?
といろいろ不安になりますよね。

 

備忘録のためにも少し専門的なことも踏まえながらお話していきます。

 

卵巣の成熟嚢胞性奇形腫とは

 

20代~30代に多くみられる良性腫瘍です。
妊娠中に発見されることも少なくありません。

 

医療職でなければ名前を見ても全くピンときませんよね。

 

そもそも成熟って何が成熟したの?と思いますよね。
これは赤ちゃんの元になる細胞(卵胞)が卵巣の中で勝手に分裂を始めちゃうんです。

 

この卵胞が中途半端に成熟するため成熟性と言われるのです。
そのためこの腫瘍の中には髪の毛や脂肪、歯、軟骨などが含まれていることが多くあります。

 

これが妊娠適齢期である年代に多く発生する理由です。

 

成熟性嚢胞性奇形種の嚢胞(のうほう)』ですがこれは水の入った袋のことです。

 

つまり成熟性嚢胞性奇形種とは様々な成分が入った水の袋が成熟した細胞の奇形ということです。

 

CTとMRI画像

 

半年続く下痢。
1ヵ月以上の吐き気。
このような症状から21歳女性が当院を受診しました。

 

血圧94/58
体重減少なし
嘔気あり
食欲不振あり
最終月経2日前
腹部・平坦 軟 腸蠕動音正常
圧痛なし

 

残業が多く、仕事のストレスだと患者さんは考えていたようです。
妊娠の可能性はないということでCT検査をおこないました。

 

そのときの画像がこちら↓

 

妊娠への影響や悪性転化について

 

成熟嚢胞性奇形腫は腫瘍の大きさにより切除する範囲と方法が異なります。
目安となるのが10cmです。

 

10cm以下であれば腹腔鏡による切除を行います。
10cm以上もしくは悪性の可能性があれば開腹による手術が必要です。

 

周囲臓器との癒着や悪性が疑われる場合は卵巣や卵管も同時に摘出してしまう場合もあります。女性であれば妊娠のことは気になりますよね。

 

手術後の妊娠については腫瘍のみの摘出はその後の妊娠には問題ありません。片側の卵巣摘出であれば、もう一方の卵巣が機能していれば妊娠は可能です。

 

腫瘍の大きさ等によっては残念ながら両側の卵巣を摘出する場合もあります。
その場合、自然な形での妊娠は望めません。

 

ただ成熟嚢胞性奇形腫の治療法は手術だけではありませんので、このような場合は医師やパートナー、家族としっかり相談された上で、治療法を検討されて下さい。

 

その上で重要になってくるのが悪性転化です。
やはり大腸のポリープなどと同じで癌化してしまうかもと考えると怖くなりますよね。

 

成熟嚢胞性奇形腫の場合、悪性転化する割合は0.17~2%
極めて低い確率であるため中には外来で経過観察を選択される患者さんもいらっしゃいます。

 

卵巣茎捻転のリスク

 

経過観察の場合に注意しておきたいのが、卵巣茎捻転のリスクです。

 

卵巣茎捻転とは文字通り卵巣が捻じれてしまい、卵巣への血液が循環しなくなってしまうことをいいます。イレウス(腸閉塞)の卵巣バージョンのような感じです。

 

これは非常に危険な状態に陥る場合があるため経過観察中の突然の激しい腹痛には特に注意されて下さい。

 

画像診断のポイント

 

ここからは少し専門的な話です。
画像診断における成熟性嚢胞性奇形種のポイントをまとめておきます。

 

成熟嚢胞性奇形腫の診断ポイントは脂肪の同定。
嚢胞内に脂肪の固まりが存在します。
→ 脂肪とそれ以外の境界では液面形成があり、chemical shiftが見られる

 

そのためMRIではT1強調画像にて高信号
脂肪抑制T1協調画像にて低信号となります。

 

MRI T1強調画像

造影MRI Fatsat T1強調画像

 

脂肪が認められた場合は他腫瘍との鑑別はあまり問題にはなりませんが、年齢が若ければ脂肪成分が少ない場合もあるため、注意深く脂肪を探すことが重要です。

 

ただし悪性転化や卵巣茎捻転による出血がある場合は脂肪の同定が困難になる場合も。
その場合は腹膜播腫や混合性胚細胞腫瘍との鑑別が問題となります。

 

またCTにて嚢胞内石灰化(歯牙)が認められる場合があることも特徴の一つです。
以下に画像診断のポイントをまとめます。

 

  • 年齢
  • T1強調画像と脂肪抑制による脂肪成分の抽出
  • 液面形成とchemical shift
  • CTの歯牙による石灰化

 

 

いかがでしたでしょうか。
少し専門的な話も交えましたが、もし医療関係者の方で誤りや追記した方がいい内容等ありましたら、指摘いただけると幸いです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です