低血糖症をご存知ですか?

 

脳梗塞疑いとの一報で救急搬送されてくる患者様の中には一定数の割合で低血糖症が含まれます。

 

先日あった実際の症例と低血糖の対処法についてお話します。

 

緊急搬送の症例

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『62歳男性。かかりつけ。右上肢脱力、構音(言語)障害、不穏。当院循環器血圧155/91。脳梗塞疑いで緊急搬送。』

 

このような患者様が救急車で運ばれてきました。
家族から話をきくと、突然いつもと違う感じになり慌てて救急車を呼んだとのことです。

 

 

血圧も少し高く、脳梗塞が最も疑わしい症例です。

 

 

実際に見た状態はロレツが回っておらず、意味不明な言葉をブツブツとつぶやいています。身体は脱力しており、意思の疎通はほとんどできません。時折顔をあげて怒鳴りちらすような大声を上げたかと思えば、糸の切れたマリオネットのようにストンと力が抜けます。目もどこか遠くを見ているような状態です。

 

すぐにMRI検査を行います。

 

技師『……あれ?梗塞も出血もないですね。発症からどれくらいですか?』
看護師『家族が発見してから3時間程だそうです』

 

技師『……うーん、低酸素脳症とかもなさそうですよ』

 

技師『あれ?血糖は測定しました?』
看護師『すみません。実は救外(救急外来)がバタバタでまだなんです。手が回らなくて……』

 

看護師『先生からは検査後血糖測定の指示が出てます』

 

検査後すぐに血糖を測定したところ38mg/dlだったと報告がありました。
低血糖の値です。

 

低血糖の診断
  • 血糖値が70mg/dl以下
  • 低血糖の症状があれば70mg/d以上でも低血糖の診断

 

このように脳卒中と低血糖症は症状が非常に似ています。
救急の現場でも脳卒中が疑われる場合はまずは血糖測定が行われます。

 

当院でも通常は血糖測定を行っていますが、当日は急患が多すぎて人手が全く足りていない状態でした。上記で会話していた看護師も話をしたのちすぐに救急外来に走って行きました。

 

この患者様はブドウ糖を舐めてもらい、しばらく休んでいただきました。ものの5分程ですぐに正常に戻り何事もなかったかのように歩いて帰宅されました。

 

このように通常では考えられないような状態に陥ってしまう低血糖。
特に普段を知る家族や友人や職場の人はその変わりように驚きます。

 

低血糖とは

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まずは低血糖とはどんな状態のことでしょうか。
『字でなんとなくわかるわ!』という声が聞こえてきそうですが……

 

 

血液中の糖(ブドウ糖)が少なくなった状態のことです。

 

 

逆に血糖値が慢性的に高くなる病気が糖尿病ですね。
しかし実は糖尿病でも低血糖は起こってしまうのです。

 

血糖値が高くなるのに低血糖?と思いますよね。こちらでお話しています。

 

糖尿病の急性合併症とは?発症したときの症状や原因や対応について

2016.06.08

 

糖尿病でも時に生死を分ける危険が伴う低血糖状態になってしまうのです。このように血液中の糖は多すぎても少なすぎてもいけません。

 

血糖の基準値

空腹時血糖   70~109mg/dl

食後2時間血糖 140mg/dl未満

 

血糖値は1日のうちに変動します。食事をすれば炭水化物が吸収され、血液中の糖が増えます。ちなみに身体には血糖値を一定に保つ働きがあります。

 

 

血糖値が低いときはグルカゴンというホルモンが分泌され血糖値を上げます。(空腹時)

血糖値が高いときはインスリンというホルモンが分泌され血糖値を下げます。(食後)

 

 

主に低血糖は空腹時に生じるものです。
『グルカゴンが分泌されるんじゃないの?』と思いますよね。

 

しかし糖尿病などの疾患ではそのコントロールが阻害されてしまうのです。

 

では低血糖が起こるとどんな症状が現れるのでしょうか。ときに命にかかわる場合があることをご存知ですか?血糖値が50mg/dl以下の場合はパニック値といい、病院でもすぐに処置が必要な値という認識です。

 

低血糖症の症状

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低血糖症の症状は様々です。
うつ病や統合失調症、パニック障害、慢性疲労症候群などに間違えられることもある低血糖。

 

実は低血糖の症状には分類があります。
その分類により症状が異なるのです。

 

ラベル名
  1. 自律神経症状
  2. 中枢神経症状
  3. 無自覚性低血糖

 

自律神経症状

血糖値が急激に下がることで現れやすい症状です。

  • 空腹
  • 発汗
  • 震え
  • 不安
  • 動悸
  • 唇の乾燥       など

 

 

中枢神経症状

血糖値が緩やかに下がることで現れやすい症状です。

  • 意識混濁
  • 痙攣
  • 集中力の欠如
  • おかしな行動(不穏)
  • 発語困難
  • 頭痛
  • 眠気         など

 

 

無自覚性低血糖

冒頭の上記症例は本人に低血糖の自覚がありませんでした。このような状態の低血糖を無自覚性低血糖といいます。

本人に自覚がないため、繰り返し低血糖になることが多いです。時には命に関わる場合もあるため注意が必要です。

 

上記のような症状が現れる低血糖ですが、血糖値によるだいたいの症状の傾向があります。

 

血糖値別の症状

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低血糖とは血糖値が70mg/dl以下のことを指します。
症状は様々なので以下に示す限りではありません。一つの指標としてとらえておいて下さい。

 

70ml/dl以下

異常な空腹感 動悸 手や指の震え 冷や汗 脱力感

 

50ml/dl以下

無気力 倦怠感 動悸 不安感 手足の震え 顔面蒼白

 

30ml/dl以下

意識レベルの低下 ロレツが回らない 異常行動 めまい 疲労感

 

30以下になると明らかな異常が見てとれます。

 

20ml/dl以下

痙攣 昏睡 など

 

20以下は非常に危険な状態です。緊急でブドウ糖もしくはグルカゴンの投与が必要です。処置が遅ければ手遅れになることもあります。

 

このように低血糖も処置が遅ければ危険な状態に陥ってしまいます。では上記症状が現れ、低血糖が疑われた場合どのように対処したらよいのでしょうか。

 

正しい対処法

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低血糖かな?と思ったときは、まず横になり安静な状態になります。そして最も望ましいのは

 

 

経口用のブドウ糖を舐めることです。

 

 

飴を持ち歩くという話もよく聞きますが、口の中で溶けるのに時間がかかる上、吸収速度もブドウ糖にはるかに劣ります。もちろん何もしないよりはるかに適切な処置ではあります。

 

そのほか身の回りにあるものとしてはバナナも吸収効率がよく効果的です。

 

病院ではブドウ糖の静脈注射もしくはグルカゴンの皮下注や筋注が行われます。食べ物による摂取は消化吸収を経て血糖値が上昇します。やはり最も望ましいのはブドウ糖です。

 

低血糖用としてタブレット状、チップ状になったものが販売されています。もし低血糖のリスクがあるようでしたら、常備しておくことをお勧めします。

 

 

いかがでしたでしょうか?
意外と知られていない低血糖の話でした。

 

脳梗塞かも?と思ったときは低血糖の可能性もあるということを頭の片隅にでも置いておいて下さい。

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